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函館地方裁判所 昭和56年(わ)234号 判決

本店所在地

北海道松前郡福島町字吉岡六六番地

吉岡砕石工業株式会社

右代表者代表取締役

平沼邦夫

本籍並びに住居

右同所

会社役員

平沼邦夫

大正一五年二月一四日生

右両名に対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官伊豆亮衛出席のうえ審理をし、次のとおり判決する。

主文

被告人吉岡砕石工業株式会社を罰金一、五〇〇万円に、被告人平沼邦夫を徴役一年にそれぞれ処する。

被告人平沼邦夫に対し、この裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪になるべき事実)

被告人吉岡砕石工業株式会社は、北海道松前郡福島町字吉岡六六番地に本店を置く砕石の生産及びその販売等を目的として昭和四〇年一〇月二五日に設立された資本金八〇〇万円(同五三年一二月一五日以前は二〇〇万円)の株式会社であり、被告人平沼邦夫は、同四二年一二月一五日同会社の取締役に、同五三年二月一日には同会社の代表取締役に就任し、この間の同五二年五月に同会社の前代表取締役であった平沼彌平が病気のため通院を要するようになってからは、同会社の業務全般を統括してきたものであるが、被告人平沼邦夫において、被告人会社の業務に関して法人税を免れようと企て、売上の一部除外及び繰延並びに架空経費の計上をするなどの不正な方法によりその所得を秘匿したうえ

第一  同五二年九月一日から同五三年八月三一日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が七、九〇〇万〇、五六三円であり、これに対する法人税額が三、〇五二万三、一〇〇円であるにもかかわらず、同五三年一〇月三一日函館市新川町二六番六号函館税務署において、同税務署長に対し、所得金額が九一〇万八、六三〇円であり、これに対する法人税額が二五六万六、三〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、被告人会社の右事業年度における正規の法人税額と右申告税額との差額二、七九五万六、八〇〇円の法人税を免れた

第二  同五三年九月一日から同五四年八月三一日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が一億〇、一七八万三、八六二円であり、これに対する法人税額が三、八〇五万〇、一〇〇円であるにもかかわらず、同五四年一〇月三一日前記函館税務署において、同税務署長に対し、所得金額が五、〇五九万二、二九二円であり、これに対する法人税額が一、七六一万八、二〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、被告人会社の右事業年度における正規の法人税額と右申告税額との差額二、〇四三万一、九〇〇円の法人税を免れた

第三  同五四年九月一日から同五五年八月三一日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が一億一、九七八万〇、八四四円であり、これに対する法人税額が四、五六五万三、四〇〇円であるにもかかわらず、同五五年一〇月三一日前記函館税務署において、同税務署長に対し、所得金額が七、〇〇二万一、七八九円であり、これに対する法人税額が二、五七六万六、四〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、被告人会社の右事業年度における正規の法人税額と右申告税額との差額一、九八八万七、〇〇〇円の法人税を免れた

ものである。

(証拠の標目)

(以下、この項において被告人会社代表者兼被告人平沼邦夫を「被告人」という。)

判事全部の事実につき

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書

一  被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書九通

一  児玉宗昭、福田克彦、栄繁一、平沼陽子の検察官に対する各供述調書

一  児玉宗昭(二通)、福田克彦(昭和五五年一二月三日付)、平沼陽子(四通)の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  検察官伊豆亮衛、弁護人山崎英二、同小笠原義正及び被告人作成の合意書面

一  大蔵事務官作成の「脱税額計算書」と題する書面

一  商業登記簿謄本三通

一  押収してある法人税決議書一綴(昭和五六年押第四二号の一)

判示第二及び第三の事実につき

一  杉村志朗の検察官に対する供述調書

一  福田克彦の大蔵事務官に対する昭和五六年五月一五日付質問てん末書

(法令の適用)

被告人吉岡砕石工業株式会社の判示各所為はいずれも昭和五六年法律五四号(脱税に係る罰則の整備等を図るための国税関係法律の一部を改正する法律)附則五条により同法による改正前の法人税法一五九条一項、一六四条一項に該当するが、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で被告人吉岡砕石工業株式会社を罰金一、五〇〇万円に処することとし、被告人平沼邦夫の判示各所為はいずれも前記昭和五六年法律五四号附則五条により同法による改正前の法人税法一五九条一項に該当するので、各罪につきいずれもその所定刑中徴役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第一の罪の刑に決定の加重をした刑期の範囲内で被告人平沼邦夫を徴役一年に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から二年間右の刑の執行を猶予することとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 谷口敬一 裁判官 杉山正己 裁判官 笠井勝彦)

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